こんにちは!たけお内科クリニック からだと心の診療所の院長、内科医たけおです。
高齢化が進む日本において、高齢者の死因や再入院の大きな要因となっている「誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)」。
日々の診療現場でも非常に多く出会う疾患ですが、誤嚥性肺炎の治療や予防・ケアは医師の力だけでは決して成り立ちません。看護師、言語聴覚士、管理栄養士、歯科医師・歯科衛生士、薬剤師、リハビリスタッフなど、多職種がワンチームとなって関わることが何よりも大切です。
しかしこれまで、「多職種が連携して誤嚥性肺炎を学ぶ」ための標準的な教育カリキュラムは、国内外を見渡してもほとんどありませんでした。
そんな中、私たちが長年携わってきた誤嚥性肺炎の多職種連携スキルアッププログラム「JAPEP(Japan Aspiration pneumonia inter Professional team Educational Program)」の取り組みをまとめた論文が、欧州老年医学会の学術誌『European Geriatric Medicine』に掲載されました!
Development of an interprofessional education program for aspiration pneumonia care: an action research study
https://link.springer.com/article/10.1007/s41999-026-01490-2
今回は、このJAPEPの取り組みと研究成果について分かりやすくご紹介します。
誤嚥性肺炎ケアを変えるプログラム「JAPEP」とは?
JAPEPは、病院単位・チーム単位で誤嚥性肺炎の包括的なケアを学ぶための教育プログラムです。
1. 「チーム参加」が必須条件
参加条件は、医師(または歯科医師)を含む3職種以上の多職種チームであること。個人参加ではなく、最初から「チームとして院内を変える」ことを目指して参加していただきます。
2. スマホで学べる反転学習(eラーニング)
まずは計7〜8時間ほどの充実した動画講義で事前学習。スマートフォンでも視聴できる環境を整え、隙間時間でしっかり基礎知識をインプットしてもらいます。
3. 架空の症例「森川じいさん」で実践ディスカッション!
事前学習を踏まえた集合セミナー(オンライン開催)では、知識の詰め込みではなく「実践と対話」を重視。 架空の患者さん「森川じいさん」の事例をもとに、各職種がどうアセスメントし、どう連携してケア方針を立てるかを徹底的にディスカッションします。嚥下評価の実演などを交えながら、お互いの職種の強みや視点を肌で体感できる構成になっています。
研修を受けた後、現場はどう変わった?
2020年のパイロットスタディから試行錯誤を重ね、これまでに32病院・131名の医療従事者にご参加いただきました。
アンケートでは、プログラム全体の満足度は5点満点中4.4〜4.5点と非常に高い評価をいただいています。
さらに注目すべきは、受講から6ヶ月後の現場の変化です。
受講前は多職種チームがなかった病院の約37.5%(8施設中3施設)で、新たに「誤嚥性肺炎ケアチーム」が結成!
既存のチームがあった病院でも、「職種間のコミュニケーションが活発になった」「ケアの質が向上した」といった継続的な変化が確認されました。
単に「勉強して知識がついた」で終わるのではなく、現場に戻ってからの継続的な行動変容と組織の変化(チーム作り)につながっていることが実証されたのです。
まとめ:知識を越えて「お互いを知る」ことから医療は変わる
誤嚥性肺炎に関するガイドラインや専門書は増えていますが、知識を頭に入れるだけでは現場の連携は生まれません。
大切なのは、「他職種がどんな視点で患者さんを見ているのか」「どう声をかければチームが動くのか」を互いに理解し合うことです。
今回の論文はオープンアクセスとなっており、どなたでも全文をお読みいただけます。多職種連携や誤嚥性肺炎ケアに関心のある医療従事者のみなさまは、ぜひチェックしてみてください!
これからも、患者さんと医療現場をより良くする取り組みを発信・実践していきたいと思います。




個人の参加にとどめず「医師を含む3職種以上のチーム参加」を必須とし、動画での事前学習をもとに架空症例で徹底的に話し合う学習設計にすごく納得しました。知識のインプットだけで終わらせず、最初から自院の連携体制を変える前提でお互いの強みや視点を体感できる仕組みは、現場で動くチームを育てる上でとても実効性が高いですね。